夜と霧

 一国にあって絶大な権限を握る人物の発する言動が、どれほどに重大な影響を人々にもたらすか。人を排除する、その根底にあるものを煎じ詰めれば、抹殺につながっていきかねない。排除、抹殺が国家レベルで為される時、その任に当たったものは、それを徹底遂行することによって立身出世を望みさえするのだ。忌むべき国家のたくらみにはめ込まれた者たちのエスカレートしゆくさま、人は残虐に慣れ得る生き物であることを、いまひとたび認識すべきだろう。

 差別、排除、抹殺、この連鎖にはくさびを打たねばならない。そして今、そのためにもこの書物をじっくりと読み直し、罪もなく家畜以下の扱いを受け、凄惨をなめ、命を落としていった人々の未来永劫消えることのない無念を記憶に刻み付けるべきだろう。

 

NHK「100分de名著」ブックス フランクル 夜と霧

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