冤罪

 なにも社会的に大きな事件ではなくとも、この世の中には、多くの冤罪がある。

 友人が、ひとの悪口ばかりを聞かせられるのに閉口し、近所付き合いを避けたところが、こんどは、自分が言ってもいない事、行ってもいないことを言い廻られ、逆に周囲から総スカンを喰らったという事だった。私は彼女がどれほどまっすぐに生きてきたかをよく知っているので、よほど私が行って、そういった事実はないと言ってもよいとさえ思った。しかし、正式に訴訟を起こすのでもない限りは、かえって油を注ぐことになるだけだろう。

 そして思った。こういったケースは巷でもよくある事で、それが特に力のある者、権力のある者に貶められた場合には、無実でありながら、ほんとうにとことんまで貶められることになるのだろうと。怖ろしいことだ。常日頃、身の証しを立てている者でさえもあり得るのだ。そうして勝った者は、次には、打ち負かした者の欠点をあげつらう。

 神が一人ひとりを尊いものと価値づけてくださっている事の深さを思う。彼女は言った。「神様が見ている、神様は必ず見ている」と。わたしもそう信じたい。